【歯科】破折歯の治療⑥

歯科担当獣医師の森田です!

今回のブログは猫で多い犬歯の破折歯の治療の解説です。
お家で欠けた歯を見つける際のポイントは過去のブログ「犬と猫、折れやすい歯はどこ?」をご参照ください。

歯が欠けてしまうと

犬猫の歯は人と同じく、歯の中に神経や血管が通っています。
歯が欠けてしまい、神経(歯髄)が出てしまった状態を露髄と言います。
露髄が起こってしまうと、細菌が歯の内部に侵入し、細菌感染が起き、歯髄は壊死し、症状が進むと根の先の炎症「根尖性歯周炎」が起きてします。

特に猫の犬歯は犬と異なり先端まで歯髄腔が通っているため、わずかに折れただけでも露髄してしまいます。
(オレンジ矢印が先端から歯髄腔までの距離)


また、露髄はしなくても歯が欠けて内部の象牙質が露出してしまうと、知覚過敏などの症状につながると言われています。
いずれにしても欠けた歯は放っておかずに適切な治療を施す必要があります。

露髄してしまった歯の治療法

歯が欠けてしまい、露髄を伴う場合、生活歯髄切断もしくは抜髄治療が適応になります。
簡単に言うと生活歯髄切断は歯髄を温存する治療法、根管治療は歯髄を抜き詰め物をする治療法です。
歯髄を温存できるかどうかは以下のポイントが重要です。

・露髄してからの時間経過(1~2日以内かどうか)
・根尖周囲病巣の有無
・治療時の歯髄出血の時間(5分以内に止血できるかどうか)

下の写真は犬歯が折れてしまった猫ちゃんです。

レントゲン検査では根尖病変を疑う所見はありませんでしたが、
破折から時間が経ってしまていたため、神経を抜く抜髄治療を行いました。

抜髄治療

抜髄治療は

・ラバーダムの設置
・アクセスポイントの形成
・歯髄の除去
・根管の洗浄
・根管充填
・歯冠修復形成

を行います。

歯肉にかぶさっている薄い青のカバーが感染を予防するラバーダムです。
歯髄を除去しながら根尖までの距離を確認します。
ガッタパーチャと呼ばれる根管充填材を歯髄腔に詰めます。
歯科用のコンポレットレジンで封入します。

まとめ

この症例は歯が折れてからの発見・治療期間まで時間あ空いてしまい、感染を起こした神経を除去しなければいけませんでした。
猫の犬歯は物理的な衝撃などで非常に折れやすいため、毎日の確認がとても大切です。

神経を残せるかどうかは発見してから受診するまでの時間がとても重要ですので、お家で気付かれた際はすぐに動物病院を受診しましょう。

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