こんにちは。皮膚科の馬場です。
前回に引き続きサイトポイントについてです。
今回は、特にサイトポイントが効かない理由の他に、「サイトポイント」と「アポキル」の違いについて、さらに実際にサイトポイントを投与するタイミングについてお話しします。
サイトポイントが効かない時
サイトポイントは多くのワンちゃんに効果がある治療法ですが、場合によっては期待通りの効果が得られないこともあります。その理由はいくつか考えられます。
- 皮膚炎が強すぎる:
- かゆみの原因となる皮膚炎が非常に強い場合、サイトポイントだけでは十分な効果が発揮されないことがあります。
- 紅斑や苔癬化がつよい:
- 皮膚の炎症や苔癬化(皮膚が硬くなり、厚くなる状態)が進んでいる場合、かゆみが強く、サイトポイントの効果が出にくくなります。
- 他の薬をすぐに減らしすぎる:
- サイトポイント投与と同時に、それまで使っていた薬を急に減らすと、効果が十分に発揮されないことがあります。少しずつ他の薬を減らしていくことが重要です。
- 再診までの期間が長すぎる:
- サイトポイントの効果は1ヶ月ほど持続しますが、個体差があり、必ずしも1ヶ月間効くわけではありません。定期的に再診し、必要に応じて投与のタイミングを調整することが大切です。
- 単純に効かない症例:
- 全てのワンちゃんに効くわけではなく、約7割の有効率です。個体によっては効果が現れない場合もあります。
- 抗ロキベトマブ抗体の産生:
- 非常に稀ですが、サイトポイントに対する抗体が作られることがあります。その場合、効果が出にくくなる可能性があります。
アポキルとサイトポイントの違い
アポキルとサイトポイントは、どちらも犬のアトピー性皮膚炎の治療に使われる薬ですが、作用機序や使い方が異なります。
特徴 | アポキル (オクラシチニブ) | サイトポイント (ロキベトマブ) |
---|---|---|
作用機序 | JAK-1/3阻害剤であり、かゆみや炎症を引き起こすサイトカインの作用を抑制します。 | IL-31モノクローナル抗体であり、直接かゆみを誘発するIL-31の作用を阻害します。 |
投与方法 | 1日1〜2回の経口投与 | 1ヶ月に1回の皮下注射 |
効果の発現 | 比較的早く効果を実感できますが、個体によっては効果が持続しないことがあります。 | 1〜2日で効果が現れ、持続期間は約1ヶ月です。 |
併用薬の制限 | 他の薬と併用する際に注意が必要な場合があります。 | 基本的に併用薬の制限がなく、他の治療とも組み合わせやすいです。 |
使用対象 | 12ヶ月齢以上の犬 | 全年齢の犬に使用可能 |
サイトポイントの投与を検討するタイミング
サイトポイントの投与は、以下のような状況で検討すると効果的です。
- アポキルで十分な効果が得られない場合:
- アポキルを使用していても、かゆみのコントロールが不十分な場合には、サイトポイントの投与を検討することで症状の改善が期待できます。
- 投薬ストレスを軽減したい場合:
- アポキルは毎日の経口投与が必要ですが、サイトポイントは月に1回の注射で済むため、投薬ストレスを軽減できます。飼い主さんの負担を減らしたい場合にもおすすめです。
- 長期的な治療が必要な場合:
- アトピー性皮膚炎の治療は長期にわたることが多いです。サイトポイントは効果が持続するため、長期間の治療を必要とする場合に適しています。
- 併用疾患がある場合:
- 他の疾患の治療薬と併用する場合でも、サイトポイントは併用薬の制限がほとんどないため、他の治療とも組み合わせやすいです。
- 12ヶ月齢未満の犬:
- アポキルは12ヶ月齢未満の犬には使用できませんが、サイトポイントは全年齢で使用可能です。若齢犬の治療に適した選択肢となります。
まとめ
サイトポイントは、アポキルとは異なる特徴を持つ薬で、アトピー性皮膚炎の治療において重要な役割を果たします。症状や治療目的に応じて最適なタイミングでサイトポイントの投与を検討することで、より効果的な治療が可能となります。お悩みやご不明な点がありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
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