【歯科】歯が折れてしまったら(10)

歯科担当獣医師の森田です!

今回のブログは犬で多い第四前臼歯の破折歯の治療の解説です。
お家で欠けた歯を見つける際のポイントは過去のブログ「犬と猫、折れやすい歯はどこ?」をご参照ください。

歯が折れてしまったら

犬猫の歯は人と同じく、歯の中に神経や血管が通っています。
歯が欠けてしまい、神経(歯髄)が出てしまった状態を露髄と言います。
露髄が起こってしまうと、細菌が歯の内部に侵入し、細菌感染が起き、歯髄は壊死し、症状が進むと根の先の炎症「根尖性歯周炎」が起きてします。

また、露髄はしなくても歯が欠けて内部の象牙質が露出してしまうと、知覚過敏などの症状につながると言われています。
いずれにしても欠けた歯は放っておかずに適切な治療を施す必要があります。

欠けてしてしまった歯

下の写真を見てみましょう。

左上顎の第四前臼歯が破折しています。
この子は硬い骨のオヤツを咬んで歯が欠けてしまった際に飼い主さんがすぐに気づき、セカンドオピニオンで受診されました。

赤いお肉のようなものが付着しています。これは歯髄から発生した炎症生肉芽組織です。

このように破折歯は、免疫反応として肉芽組織が形成されることがあります。
細菌が歯髄内に侵入し、炎症反応が起こります。その過程で新しい血管や結合組織が増殖し、肉芽組織が形成されます。
肉芽は、感染や炎症の広がりを防ぐと同時に、周囲の組織を保護する働きもあります。

さらに、肉芽組織形成は自然治癒の一環であり、炎症を抑えるために行われますが、慢性的に形成される場合には治癒が遅れることがあるため、適切な治療が推奨されます。

治療方法

露髄を伴わない場合は歯冠修復が適応となります。
露髄を伴う場合、生活歯髄切断、抜髄治療、抜歯が適応になります。
詳しくは「欠けてしまった歯を治す②」をご覧ください。

この子は明らかに露髄し、歯髄には肉芽が覆い被さっています。
破折後の時間経過も短く、歯科レントゲンでは根尖病変もなかったのですが、わんちゃんの性格・ライフスタイルを加味して抜歯をお勧めしました。

歯を温存する治療では多くの場合コンポジットレジンという歯科用プラスティックで歯冠修復を行います。
人の虫歯治療でいうところの「被せ物」です。
この被せ物は一度取れてしまうと再度麻酔下での治療が必要になります。
そのため、被せ物が取れてしまうような

・硬いものを咬むのが好き
・引っ張り合いが好き
・おもちゃなどを咬んで振り回すのが好き

といった子や、複数回の麻酔リスクが高い子などには抜歯をお勧めすることもあります。

まとめ

この子は、性格・ライフスタイルを加味して抜歯しました。
日頃硬いものを噛む習慣があるワンちゃんは上顎の第四前臼歯や下顎の第一後臼歯(奥歯)が非常に折れやすいため、毎日の確認がとても大切です。

神経を残せるかどうかは発見してから受診するまでの時間がとても重要ですので、歯が折れてしまった際はすぐに動物病院を受診しましょう。

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