こんにちは。東京動物皮膚科センター/神宮プライズ動物病院の馬場です。
今回は、犬の「皮膚黒色腫(メラノーマ)」についてお話しします。皮膚黒色腫は、犬の皮膚に発生するメラノサイト由来の腫瘍です。比較的稀ですが、その中でも発生部位や挙動によって治療方針が異なるため、適切な診断と治療が重要です。
皮膚黒色腫(メラノーマ)の概要
皮膚黒色腫は、表皮、真皮、または毛包付属器に存在するメラノサイトが異常増殖して形成される腫瘍です。犬の皮膚腫瘍全体の中で2.7-8.6%を占めるとされており、ほとんどが良性ですが、一部が悪性であるとされています。
皮膚のどの部位にも発生し得ますが、特に趾(つまさき)や足底部にできた場合、悪性度が高く挙動が悪いため注意が必要です。
症状と診断
皮膚黒色腫の臨床症状は多様で、以下のような特徴があります:
- 色素沈着した平坦または隆起した病変
- 結節状またはドーム状で、境界が明瞭なものや不明瞭なもの
- 通常、単一病変として認められるが、複数の病変が発生する場合もある
- 趾端メラノーマの場合、跛行や痛み、腫脹、潰瘍形成を伴うことがある
確定診断には細胞診や病理組織検査が欠かせません。細胞診では、黒色や緑色のメラニン顆粒が確認できるため診断は比較的容易です。一方、無色素性のものや悪性度の評価が必要な場合には病理検査が重要です。
また、悪性の場合は転移のリスクがあるため、近くのリンパ節や全身臓器の検査として画像診断(X線、CT、超音波検査)も併用します。
治療法
皮膚黒色腫の治療は、腫瘍の性質や進行度によって異なります:
- 外科手術:治療の基本は腫瘍の完全切除です。悪性を疑う場合は広範囲のマージンを取ることが推奨されます。趾端に発生した場合、局所浸潤性が高いため断脚術が必要になることもあります。
- 放射線治療:切除が難しい場合や不完全切除の場合には放射線治療を検討します。
- 化学療法:カルボプラチンなどが術後補助療法として使用されることがありますが、単独での効果は限定的です。
- 分子標的治療:COX-2阻害薬の使用が検討されることがあります。疼痛管理にも役立つ可能性があります。
- 免疫療法:ONCEPT(DNAメラノーマワクチン)の皮膚黒色腫への適応外使用や、抗PD-1抗体療法などが研究段階ですが注目されています。
当院での対応
神宮プライズ動物病院では、個々の症例に合わせた治療プランを提供しています。腫瘍治療は飼い主様との相談を重視し、治療と生活のバランスを大切にしています。
気になる皮膚の病変がある場合や診断に不安がある場合は、ぜひご相談ください。
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