皮膚糸状菌症の診断・治療(当院大隅獣医師執筆[皮膚科の処方ノート]より)

当院の皮膚科医が執筆した書籍「皮膚科の処方ノート2023」より、皮膚科でよくみる疾患の簡単な解説を紹介致します。
今回は猫で特に多く認める、「皮膚糸状菌症」について紹介します。

皮膚糸状菌症とは?

皮膚糸状菌症は、真菌の一種である皮膚糸状菌が角化細胞に侵入することで引き起こされる皮膚病です。
主な原因菌は以下の3種類です。

• Microsporum canis(M. canis)
• Microsporum gypseum(M. gypseum)
• Trichophyton mentagrophytes(T. mentagrophytes)

脱毛などの症状を発症する真の感染だけでなく、
不顕性感染や腐性による無症状の感染動物(キャリア)の存在を理解することが重要です。

診断のポイント

皮膚糸状菌症の診断にはいくつかの検査方法があります。
動物の状態や感染の疑いがあるケースに応じて、適切な検査を組み合わせて診断が行われます。
まずは問診によって感染動物への接触歴動物の年齢免疫抑制状態の有無飼い主や同居動物への感染の有無を確認します。
問診によって糸状菌症が疑われた際に、以下の検査を必要に応じて実施します。

  1. ウッド灯検査
    特殊なライトを使用し、感染している場合に蛍光を発するM. canisを確認します。
  2. 被毛検査
    感染が疑われる部位の被毛を採取し、顕微鏡で確認する方法です。簡便な検査ですが、糸状菌が有する分節分生子を確認することで確定診断に至ります。
  1. 真菌培養
    治療経過の確認や、毛包生検で真菌が確認できない場合などに補助検査として行われます。
  1. 病理組織学的検査
    感染部位の被毛・皮膚を採取し病理検査を行います。確定診断が可能です。
  1. PCR検査
    遺伝子レベルで真菌を検出し、感染の有無や菌の種類を特定します。
    陰性的中率が高いことが特徴です。
  2. ダーモスコピー
    ダーモスコープと呼ばれる医療用スコープを使用し、皮膚の表面を10~30倍に拡大して観察します。
    感染被毛を特定できる場合があります。

治療のポイント

治療のポイントとしては下記のようなものがあります。

  • 全身の毛刈り(重症例のみ実施)
  • 全身薬としてイトラコナゾールやテルビナフィンが適応(パルス療法も存在)
  • 抗真菌剤含有局所薬やシャンプーなどの外用薬も併用することが推奨

また、当院では、下図のCCATS planの概要を飼い主様にお伝えしています。
感染動物の治療だけでなく同居動物や環境に対する対策を同時に行うことで、治療期間の短縮や再発防止が期待できます。
重要なのは、拭き取りなどの物理的な清掃であり、その他次亜塩素酸による消毒、洗濯機での洗浄も補助となります。

予後・その他

治療の終了は

  • 病変の消失
  • 真菌培養検査の二回連続陰性

が目安となります。
当院ではイトラコナゾールの5mg/kg 隔週パルス療法から開始して、6週間程度を目安に治療終了の判定を開始します。
皮膚糸状菌症は、動物から人へ感染することがあるため、特に子供やお年寄りは注意する必要があります。

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