当院の皮膚科医が執筆した書籍「皮膚科の処方ノート2023」より、皮膚科でよくみる疾患の簡単な解説を紹介致します。
今回は当院での、犬の痒みに対する診断・治療の進め方について紹介します。
痒みの診断・治療ステップ
下の図は2015年に発表された犬アトピー性皮膚炎のガイドラインを図示し、改変を加えたものです。
掻痒行動が継続する場合の主な原因は3つで、外部寄生虫症、二次感染、そしてアレルギー性皮膚炎とされています。
例外として、図の下に示した身体的要因、腫瘍や免疫疾患、心因性も検討するべきだと思われています。
うっかり見逃さないように、ガイドラインには記載のない皮膚糸状菌症を図の一番上に加えています。
診断・治療のポイント
基本的には下図の上から順にステップ1、2、3と進めていくことが推奨されています。
外部寄生虫症は近年ではイソオキサゾリン系薬剤で予防されている場合、罹患率は高くないと思われます。
皮膚糸状菌症は必ず最初に除外するべきと思われます。
二次感染のコントロールは、膿皮症やマラセチア皮膚炎に関するコラムをご参照ください。基本的に局所療法で対応をはじめると成功率が高いです。
ステップ2までコントロールが進んだ後でも掻痒が継続する場合、ステップ3のアレルギー性皮膚炎の対応をはじめると分かりやすいです。
食物有害反応を完全に特定・除外できる検査は存在しないため、8週間の除去食試験を1、2種類検討し、それでも改善しない場合は犬アトピー性皮膚炎と診断することができます。
犬アトピー性皮膚炎と診断した後は、腰を据えて下図3-B以下の治療に専念します。
中高齢初発で、一般的な皮膚炎に類似しない病変を認めた際は、皮膚リンパ腫やその他の免疫疾患の可能性を早期に検討し、必要に応じて検査を進めます。
掻痒行動、自傷行動が異常なパターンや分布を伴っている場合、心因性の関与を疑います。
その他
犬アトピー性皮膚炎の治療として、2023年現在では下図青線より上がガイドラインで推奨されているものであり、下段より下のものはまだエビデンスが不足しているもので、当院では補助治療と位置付けています。
犬の慢性掻痒性疾患は1日にして診断できるものではなく、下図の上から一つずつ検証をしていくことで最終診断につながることを獣医師と飼い主様で共有することが重要です。(Step-by-step diagnosis)
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