当院の皮膚科医が執筆した書籍「皮膚科の処方ノート2023」より、皮膚科でよくみる疾患の簡単な解説を紹介致します。
今回は犬の皮膚リンパ腫の診断・治療のポイントについて紹介します。
皮膚リンパ腫とは?
下図の通り、リンパ球由来の悪性腫瘍とされています。
リンパ腫は解剖学的な部位の特徴によって予後が異なる傾向があり、皮膚リンパ腫は節外型の一種です。
最も多いのは上皮向性T細胞性リンパ腫であり、これはさらにヒトと同様に菌状息肉腫、パジェット様細網症、セザリー症候群に分類することもできるが、犬での分類は不明確な部分も多くみられます。
皮膚リンパ腫では、低分化型、高分化型の分類は明確ではないとされています。
診断のポイント
中・高齢初発で一般的な皮膚疾患に類似しない病変を認めた際は、皮膚リンパ腫の可能性を常に疑います。
特に、隆起性の病変や色素脱、一般的な治療に反応が乏しい病変などを認めた際は、リンパ腫の可能性を考慮します。
病変びらん部の皮膚押捺標本の細胞診で大量のリンパ球を認めることがあります。
確定診断には、病理組織学的検査が必要です。
免疫染色によってTBなどの再分類もできます。
リンパ球クローナリティ検査は特異度が高くないため、あくまで補助的な検査として用います。
全身精査によって、原発巣の確認や腫瘍のステージングを忘れてはいけません。
治療のポイント
残念ながら、皮膚リンパ腫に対する有効な治療法は明らかになっていません。
基本的に、治療の目的は根治ではなく、緩和治療となります(孤立性病変を除く)。
一般的な治療生存期間中央値は、約6ヶ月とされています。
治療各論
CCNU(ロムスチン)などの強い抗がん剤を使用したデータでも、反応期間中央値は約3ヶ月です。
近年、ビタミンA誘導体の投与が生存期間を延ばす可能性について、いくつかのデータが示されました。
一部の皮膚リンパ腫はオクラシチニブの高用量投与によって寛解することが報告されましたが、反応が乏しく進行する例も存在しています。
L-アスパラギナーゼを連投することで長期間維持できた例も存在しています。
孤立性病変の場合、QOL維持を目的とした外科切除も適応となります。
当院皮膚科では、動物のQOLを踏まえて、それぞれの状況に合った治療を行うことが重要であると考えています。
予後・その他
皮膚リンパ腫の中でも、近年はさまざまな挙動をするパターンが明らかになっており、当院では最初から治療を諦めるべきではないと考えています。
一般的なリンパ腫の治療とは概念が異なる部分もあるため、専門家へのセカンドオピニオンなども重要です。
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