猫の中耳炎(当院大隅獣医師執筆[皮膚科の処方ノート]より)

当院の皮膚科医が執筆した書籍「皮膚科の処方ノート2023」より、皮膚科でよくみる疾患の簡単な解説を紹介致します。
今回は猫の中耳炎の診断・治療のポイントについて紹介します。

中耳炎とは?

まず簡単に解剖学的な図をイメージしてみましょう。
下図のとおり、いつも見ている耳(耳介)の奥には耳道という長いトンネル続いており、途中でL字に曲がって、突き当たりに鼓膜があります。

鼓膜の奥には骨で囲まれた空間があり、鼓膜より外を外耳、鼓膜より中を中耳とイメージするとよいでしょう。
中耳は耳管という細い管で鼻の奥(鼻咽頭)につながっており、鼻と同じ粘膜が内張しています。
さらにこれら内側には脳があり、脳と中耳の間の頭蓋骨の中に内耳があります。内耳には、聴神経や平衡感覚を司る前庭神経が存在します。

基本的にこの中耳に何かしらの貯留物がある場合を中耳炎と呼びます。中耳炎は一般的に二次性と原発性に分類することができますが、猫の場合、鼓膜が破れなくても発症する原発性中耳炎が多いのです。
また、猫の中耳は中隔によって大きく2つの空間に分かれているため、治療の妨げとなります。中耳炎の猫では、耳道や鼻咽頭にポリープを形成していることも多く見受けられます。

診断のポイント

慢性化した中耳炎は気付かれないことも多いですが、一番大切なのは下図に示した症状です。
何かしらの症状がある場合、中耳炎を疑い検査を行うことが推奨されます。

  • 耳鏡検査:正常な鼓膜と比較して透明性の低下した鼓膜が認められます。これは手持ち耳鏡では判断が難しい場合が多く、ビデオオトスコープによる観察が有用です。
  • 画像診断:CT検査やMRI検査が中耳炎の確定診断に繋がりますが、X線検査でも一定の所見は得られるため、まずはX線検査を行うことが重要です。
  • 細胞診/培養検査:中耳内容物の存在を確認したら、鼓膜穿刺によって中耳内貯留物をサンプリングし、これらの検査を実施します(すでに鼓膜が穿孔している場合は、穿刺は不要です)。
  • 病理組織学的検査ポリープが存在している場合は切除し、炎症か腫瘍かを確認します。

治療のポイント

基本的に中耳炎の治療を大きく分けると、以下の3つがあります。

  1. 点耳・内服
  2. ビデオオトスコープによる保存療法
  3. 外科切除

過去の報告では抗菌薬の内服によっても中耳炎が完治する場合があることが示されているため、まずは内服から試すことも価値があります。
内服で改善を認めない場合、従来は外科切除が適応となっていましたが、近年では、ビデオオトスコープによる保存療法も選択できるため、当院では動物と飼い主様の状況によって適応を相談していきます。

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