【皮膚】膿皮症の新しいガイドラインに基づく全身性抗菌薬の分類(獣医向け)

こんにちは、馬場です。

2024年の膿皮症ガイドラインでは、抗菌薬の選択に関して慎重な議論が行われ、以下の4つのグループに分類されました。今回はより詳細に抗菌薬について解説します。

表在性膿皮症の治療は外用薬が中心ですが、外用療法のみでは効果が得られなかった症例、または飼い主や患者の制限により外用治療が実施できなかった場合にには全身性抗菌薬の使用を検討します。
また、深在性膿皮症に関しては全症例で薬剤感受性試験の結果に基づいた全身性抗菌薬の選択が推奨されています。

以下の表は4分類の薬剤の名前や薬用量となります。

1. 第一選択薬

第一選択薬は、犬の膿皮症に対する臨床試験で良好な効果が確認され、政府の承認によって効果が裏付けられている薬剤です。

  • 対象となる薬剤
    • セファレキシン
    • アモキシシリン-クラブラン酸
    • クリンダマイシン
    • リンコマイシン(ただし感受性試験のブレイクポイントは定められていない)

2. 第二選択薬

第二選択薬は、以下のリスクを伴うため、使用には注意が必要です。

  • 多剤耐性病原菌の選択圧を増加させるリスク
  • 有害事象のリスクが高まる可能性
  • 一部の国では、フルオロキノロン系や第三世代セファロスポリン系の抗菌薬を処方する前にASTを実施する必要がある
  • 対象となる薬剤
    • フルオロキノロン系(エンロフロキサシン、マルボフロキサシン)
    • 第三世代セファロスポリン系(セフポドキシム、セフォベジン)
    • テトラサイクリン系(ドキシサイクリン、ミノサイクリン)

3. 補欠薬(特殊なケースでのみ使用)

補欠薬は、以下のような特殊な条件でのみ使用されます。

  • 第一選択薬および第二選択薬が適切でない場合
  • MRSP(メチシリン耐性ブドウ球菌)感染など、治療困難な症例
  • 一部の薬剤はヒト医療で極めて重要であり、動物への使用が禁止されている国もある
  • 対象となる薬剤
    • リファンピシン
    • アミカシン
    • ゲンタマイシン
    • クロラムフェニコール
補欠薬を使用するための5つの基準
  1. AST(薬剤感受性試験)で感受性が認められ、他の薬剤が適切でない。
  2. 有害事象のリスクが事前の臨床検査等で評価されている。
  3. 膿皮症の治療予後が良好である。
  4. 基礎疾患が特定され、再発予防のための治療計画が立てられている。
  5. 飼い主が治療リスクとコンプライアンスの必要性を理解している。

4.強く推奨されない

犬に対するリネゾリドとバンコマイシンの使用は強く推奨されていません。これら の薬剤は人においてのみ使用が認可されており、人の重篤な多剤耐性菌による感染の治療のために “予備” として考慮されるべきとされえています。EU では 2023 年以降、全ての動物においてこれらの使用は禁止されているそうです。


まとめ

  1. 第一選択薬は臨床的なエビデンスが豊富で、一般的に安全に使用可能
  2. 第二選択薬は慎重に使用する必要があり、国ごとの規制にも注意が必要
  3. 補欠薬は特殊な症例でのみ使用し、ASTの結果を必ず確認する
  4. ガイドラインに従い、膿皮症の治療において抗菌薬の適切な選択を行うことが重要

この情報を活用し、膿皮症の治療において最適な抗菌薬を選択しましょう!🐾

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