はじめに
こんにちは、東京動物皮膚科センターの馬場です😊
今回は、犬の化膿性外傷性皮膚炎(急性湿性皮膚炎、ホットスポット)について解説します。
この病気は、急激な痒みとびらんを伴う境界明瞭な病変を特徴とする表面性膿皮症の一種です。発症が急速で、飼い主様が気づいたときにはすでに大きな病変になっていることもあります。
病因と発症のメカニズム
ホットスポットの発症には、何らかの刺激や痒みが引き金となります。以下のような要因が関与することが多いです。
- 外部寄生虫(ノミ、ダニなど)
- アレルギー性皮膚炎(食物アレルギー、アトピー性皮膚炎)
- 耳炎や外傷(特に耳の近くや頚部に発生しやすい)
- 湿度や温度の上昇(特に夏場に多い)
- ストレスや行動因子(過剰なグルーミング、分離不安)
これらの要因による痒みにより、犬が執拗に舐めたり掻いたりすることで皮膚が損傷し、そこに細菌感染が加わることで急激に悪化します。
症状
ホットスポットの典型的な症状は以下の通りです。
- 境界が明瞭な紅斑とびらん
- 毛が抜け、皮膚がぐじゅぐじゅしている
- 強い痒みと痛みを伴う
- 悪臭がすることもある
病変部は急速に拡大し、数時間から1日で大きくなることがあります。放置すると深在性膿皮症へと進行する可能性があるため、早期対応が重要です。
診断
ホットスポットの診断には、
- 病歴と視診:急激な発症と特徴的な病変を確認
- 細胞診:好中球の浸潤や細菌の過剰増殖を確認
- 基礎疾患の評価:アレルギーや寄生虫疾患の有無をチェック
細菌培養や抗菌薬感受性試験は通常不要ですが、再発を繰り返す場合は考慮されます。

治療
ホットスポットの治療の基本は以下の3つです。
- 病変部の処置
- 患部の毛刈り:病変部の毛を刈り、清潔に保つ
- 洗浄・消毒:クロルヘキシジンや過酸化ベンゾイルシャンプーを使用
- 乾燥を促す外用剤の使用(フシジン酸、抗菌ワイプなど)
- 痒みと炎症の抑制
- 軽度~中等度:ステロイド外用剤(ヒドロコルチゾンなど)
- 重度:短期間のグルココルチコイドの内服(プレドニゾロンなど)
- JAK阻害剤(オクラシチニブ)や抗ヒスタミン薬の使用も考慮
- 基礎疾患の管理と再発予防
- ノミ・ダニ予防(外部寄生虫対策)
- アレルギー管理(食事管理やアトピー対策)
- ストレスの軽減(適切な運動や行動療法)
予後と注意点
適切な治療を行えば、ホットスポットは通常数日~1週間で改善します。しかし、再発を繰り返す場合は、基礎疾患の評価と長期管理が必要になります。
- 掻き壊しの防止:エリザベスカラーや洋服の着用を検討
- 湿度管理:特に夏場は皮膚を乾燥させる工夫が重要
- 定期的な皮膚チェック:早期発見・早期治療が鍵
おわりに
ホットスポットは急速に悪化しやすい疾患ですが、適切な処置をすれば速やかに回復が期待できます。飼い主様が病変を見つけた際は、できるだけ早めに動物病院を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
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