【皮膚】犬の表在性膿皮症について

こんにちは、東京動物皮膚科センターの馬場です!🙂

今回は、犬の表在性膿皮症について詳しく解説します。

表在性膿皮症とは?

表在性膿皮症は、表皮と毛包を侵す細菌感染症であり、皮膚科ではとても一般的な疾患です。分類として以下のようなものがあります。

  • 表在性細菌性毛包炎
  • 剥奪性表在性膿皮症(旧:表在性拡大性膿皮症)
  • 膿痂疹
  • 粘膜皮膚膿皮症

原因菌のほとんどはStaphylococcus pseudointermediusであり、常在菌です。そのため、膿皮症は根本的な基礎疾患が存在し、それによって二次的に発症することが多いと考えられます。

臨床症状

表在性膿皮症の症状は多岐にわたりますが、主に以下の特徴があります。

  • 丘疹や膿疱の形成
  • 痂皮(かさぶた)や脱毛の出現
  • 紅斑(皮膚の赤み)や表皮小環
  • かゆみを伴うことが多い
  • 巣状、多巣性または全身性に病変が広がる

多くの場合、慢性的に続くと毛包が障害され、二次的な脱毛や皮膚の過形成が進行します。

診断

診断には、

  1. 臨床症状の評価(典型的な皮疹や病変分布)
  2. 細胞診(好中球の浸潤と細菌の確認)
  3. 基礎疾患の探索(アレルギー、ホルモン異常、免疫不全など)
  4. 細菌培養と薬剤感受性試験(特に再発や重症例では重要)

が重要です。

治療

表在性膿皮症の治療は、外用療法と全身療法に分かれます。

1. 外用療法

新しいガイドラインでは、外用療法が最も推奨されています。

  • クロルヘキシジン(2~4%)のシャンプーを週2~3回使用
  • 過酸化ベンゾイル(皮膚の角質除去と抗菌効果)
  • 局所抗菌剤(フシジン酸、ムピロシンなど)
  • 患部を清潔に保ち、乾燥させる
2. 全身療法(抗菌薬の使用)

外用療法が効果不十分な場合や、広範囲の病変がある場合にのみ全身療法を行います。

  • 第一選択薬:セファレキシン、クロラムフェニコール
  • 第二選択薬:クリンダマイシン、ドキシサイクリン

※新ガイドラインでは、抗菌薬の使用は極力控え、可能な限り薬剤感受性試験を実施することが推奨されています。

3. 耐性菌の問題

近年、**メチシリン耐性Staphylococcus pseudointermedius(MRSP)**が増加しており、不適切な抗菌薬の使用は耐性菌を増やす原因となります。そのため、抗菌薬の使用には慎重さが求められます。

  • 不必要な抗菌薬の処方を避ける
  • 外用療法を優先し、感染拡大を防ぐ
  • 病変消失後は抗菌薬を休薬する(これまでは7日間継続が推奨されていたが、新ガイドラインでは不要とされた)

基礎疾患の管理

膿皮症を再発させないためには、基礎疾患の管理が重要です。

  • アレルギー疾患(アトピー、食物アレルギーの評価と対策)
  • 内分泌疾患(甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症のスクリーニング)
  • 免疫異常(慢性疾患や長期のステロイド使用歴の確認)

予防と管理

  • 定期的なシャンプーで皮膚を清潔に保つ
  • 適切な食事と栄養管理(オメガ3脂肪酸やビタミンEの補給)
  • ストレスを軽減する(過度なグルーミングや舐め行動の管理)
  • 環境要因の調整(高湿度を避ける、清潔な寝具の使用)

まとめ

表在性膿皮症は適切な診断と治療が重要であり、新しいガイドラインでは外用療法の積極的な活用耐性菌対策が強調されています。基礎疾患の管理と併せて、個々の症例に適した治療を行いましょう。

膿皮症は以前からこのブログでもかなり紹介していますが、これから暖かくなると多く認められる疾患です。
これは??と思ったらぜひお気軽にご相談ください。

📞 東京動物皮膚科センターの予約はこちら

⬇ 03-3403-8012