【皮膚】犬の深在性膿皮症について

こんにちは、東京動物皮膚科センターの馬場です🐼
今回は、犬の深在性膿皮症について詳しく解説します。

深在性膿皮症とは?

深在性膿皮症は、真皮に発生した細菌感染が特徴で、場合によっては皮下組織まで拡大します。表層の感染と比較して感染部位が血管と近いため、血行性感染や敗血症へ進行するリスクがあります。

深在性膿皮症には以下のタイプがあります。

  • 深在性毛包炎
  • 癤腫症(毛包周囲に膿が溜まり、硬結を形成)
  • 蜂窩織炎(真皮や皮下組織に広がる炎症)
  • グルーミング後せつ腫症(広範囲を侵す感染症)
  • 肢端舐性皮膚炎(慢性的な舐め行動による二次感染)
  • 趾間感染性結節(基礎疾患を背景に発症しやすい)

臨床症状

深在性膿皮症の症状は重篤になることが多く、以下の特徴があります。

  • 排液や膿の分泌(悪臭を伴うことが多い)
  • 瘻管形成(感染が進行し、皮膚にトンネル状の病変が形成)
  • 出血性痂皮や紫斑(血管が破壊されることで生じる)
  • 潰瘍形成(皮膚が深く損傷し、長期間治癒しない)
  • 皮膚の腫脹と発熱(局所的な炎症の悪化)

感染が進行すると、全身症状(食欲低下、発熱、元気消失)を伴うことがあり、適切な治療が急務となります。

診断

深在性膿皮症の診断には、以下の検査を実施します。

  1. 臨床症状の確認(病変の広がり、痛みの有無など)
  2. 細胞診(好中球やマクロファージの貪食細菌の確認)
  3. 細菌培養と薬剤感受性試験(耐性菌の特定)
  4. 皮膚生検やFNA(細針吸引生検)(表面検査で細菌が検出されない場合に実施)
  5. 血液検査(敗血症の有無、白血球増加などを確認)

特に再発例や重症例では、病変部の深部からの組織採取が重要です。

治療

1. 抗菌薬治療(全身療法)

深在性膿皮症のすべての症例において、全身性抗菌薬が適応となります。

  • 第一選択薬:セファレキシン、アモキシシリン/クラブラン酸
  • 第二選択薬:クリンダマイシン、ドキシサイクリン(薬剤感受性試験の結果に基づく)
  • 耐性菌(MRSP)対策:リネゾリド、クロラムフェニコール(薬剤感受性試験が必須)

投与期間は最低3週間が推奨され、

  • 細胞診で細菌が消失し、臨床症状が改善するまで継続
  • 以前は「症状消失後さらに2週間の投与」が推奨されていたが、新ガイドラインでは不要とされた。
  • 2週間ごとの細胞診による評価が必要。
2. 補助的な外用療法

全身療法に加えて、補助的に外用療法を併用することで治療効果が向上します。

  • クロルヘキシジン(2-4%)シャンプーを週2-3回使用
  • 過酸化ベンゾイル(皮膚の角質除去と抗菌効果)
  • 局所抗菌剤(ムピロシン、フシジン酸など)
  • 患部の洗浄と消毒を定期的に行う
3. 免疫機能と基礎疾患の管理
  • ホルモン異常(甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症)の評価
  • アレルギーや自己免疫疾患の管理
  • 適切な栄養摂取とストレス軽減
4. 外科的処置(重症例)
  • 膿瘍や瘻管形成が進行した場合、外科的な排膿処置デブリードマン(感染組織の切除)を検討

予後と管理

深在性膿皮症は適切な治療により改善するものの、再発が多い疾患であるため、長期的な管理が重要です。

  • 適切な抗菌薬の選択と使用期間の遵守
  • 外用療法を併用し、環境管理を徹底
  • 基礎疾患の評価と治療を継続的に行う

まとめ

深在性膿皮症は、迅速な診断と適切な治療が求められる疾患です。特に重症例では、全身療法と局所療法を組み合わせた包括的なアプローチが必要となります。再発防止のため、基礎疾患の管理と長期的なフォローアップを忘れずに行いましょう。

深在性膿皮症は正直見慣れていないと診断や治療に苦慮することがあります。
良くならないなと思ったら、ぜひご相談ください。\

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