こんにちは。
神宮プライズ動物病院の馬場です。
前回はアロペシアXに関して簡単に紹介しました。
じつはアロペシアXに似ているけど、異なる疾患というのが大きく3つ存在します。
①甲状腺機能低下症 ②副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)③性ホルモン関連性疾患
今回はそのうちのひとつ、甲状腺機能低下症に関して説明していきます。
そもそも甲状腺は、首のあたりにある、甲状腺ホルモンを合成・放出する器官です。
この甲状腺ホルモンは熱産生や代謝、成長など、全身のさまざまな機能に作用します。車でいうとアクセルのような役割です。
毛に関しても、毛を成長させる上で甲状腺ホルモンは重要です。
甲状腺機能低下症は、甲状腺がなんらかの要因で萎縮したり炎症がおこり、うまく甲状腺ホルモンを合成・放出できなくなる疾患です。
中高齢のわんちゃんに多い疾患ですが、若齢でも見かけます。
症状としては、脱毛・薄毛、フケが多い、テンションが低い、そんなに食べていないのに体重が増加する、むくみなどが見られることがあります。
特に体幹部の脱毛・薄毛は、甲状腺機能低下症の60-80%の症例で見られるためアロペシアXとの鑑別が必要です。
これらの症状や、一般的な血液検査から甲状腺機能低下症を疑い、
さらに甲状腺ホルモンを測定することでより確定診断に近づけていきます。
治療は甲状腺ホルモンの補充です。これは基本は内服薬を飲んでもらい、症状やホルモン値の改善を観察していきます。
しっかり治療できれば、予後良好です。
しかし、ずっとほっておくと、他の病気にかかりやすくなったり、最悪命に関わることもあるので、要注意です。
アロペシアXだと思って治療していたけど、実は甲状腺機能低下症だった。なんてことがないように、しっかり最初に診断をつけましょう。
次回以降は、アロペシアXと似ている他の病気に関してもご説明していきます。
毛が薄い、脱毛症などでお困りの際はぜひお気軽にご相談ください。