【歯科】口の中に腫瘍!?間違えやすい構造

歯科担当獣医師の森田です!

以前紹介したブログ「歯肉のできもの①」では口腔内にできる炎症性の腫瘤について解説しました。
本日は口腔腫瘍と間違えやすい口の構造を紹介します。

切歯乳頭

上の写真は犬の上顎です。
白い矢印で示した場所に、ぷっくりと膨れている部分があります。
これは切歯乳頭と言って、正常犬で見られる構造です。

切歯乳頭(Incisive Papilla)

切歯乳頭は、犬の口腔内、特に上顎(うわあご)の前方中央に位置する小さな突起物です。
具体的には、上顎の切歯(前歯)の後ろ、口蓋(こうがい:口の天井)に存在します。
この乳頭は、重要な神経と血管の集合体が通る場所でもあります。

切歯管(Incisive Canal)

切歯管は、切歯乳頭の下に存在する管状の構造で、上顎の骨の中を通っています。
この管は、犬の嗅覚に関与しており、フェロモンなどの化学物質を感知するための補助機能を果たしていると言われています。
口内細菌が切歯管に感染を引き起こし、鼻炎の原因となるケースも報告されています。

切歯乳頭と切歯管の役割

  1. 嗅覚補助: 犬は非常に鋭い嗅覚を持っており、フェロモンを含む化学物質を感知するために、切歯乳頭と切歯管が役立っています。これにより、他の犬や動物からのフェロモン情報を受け取ることができます。
  2. 血管と神経の通路: 切歯管は、血管や神経が通る経路でもあります。これにより、前歯や口蓋に栄養や感覚を供給します。
  3. 口腔内の構造: 切歯乳頭は口腔内の重要なランドマークであり、歯の並びや咬合(こうごう)にも影響を与える可能性があります。